歯周病について

歯周病の原因とそのメカニズム

歯周病は、歯を支えている周囲の組織が炎症を起こす病気です。初期段階では痛みなどの自覚症状がなく、気がつかないうちに進行してしまう特徴があります。歯周病が重度にまで進行すると顎の骨が溶け、歯を失うことにもつながりかねません。

「歯ぐきが腫れている」「歯ぐきから出血している」「口臭が気になる」などの症状は、歯周病のサインかもしれません。歯周病専門医が在籍する多摩市永山の歯医者「福嶋歯科医院」が歯周病の基本的な知識をご紹介しながら、どのように歯周病を治療していくかをお伝えします。

「歯周病」について

「歯周病」について

歯周病とは歯の周囲の組織に大きなダメージを与える病気です。歯の周りの組織には、歯を支えている顎の骨である歯槽骨(しそうこつ)や歯と骨をつなぐ歯根膜(しこんまく)、そして「結合組織」や「角化歯肉」などたくさんの組織があります。

これらの部位に、細菌が感染し炎症が起きてしまう病気が歯周病です。口腔内にはまだ解明できていない細菌を含め、700種類もの細菌が存在しています。その中には、歯周病を直接的に引き起こす3種類の細菌がおり、さらにその活動を助けるような働きをする20種類以上のバクテリアが一緒になって歯周病を引き起こしていきます。

歯周病で歯を失ってしまうメカニズム

歯周病で歯を失ってしまうメカニズム

歯周病になっているということは、歯周組織が感染している状態を意味します。身体の免疫は、最初のうちは歯根や歯ぐきに付着した細菌を排除しようと懸命に戦いますが、次第に汚染されている範囲や量が多くなると、歯根を自分の身体ではないと認識するようになります。

自分の身体ではないものが体内にあると、免疫はそれを切り離すために自らの健康な組織を溶かし、体外に排出しようとします。その結果、歯槽骨が溶けて歯が抜けてしまうのです。

全身に影響を及ぼす「歯周病」

全身に影響を及ぼす「歯周病」

歯周病は口腔内だけではなく、身体全体に影響を及ぼす病気であることが分かっています。歯周病が発生している「歯周ポケット」は、合計すると手のひらと同じくらいの面積があり、歯周病を治療していない期間はずっと炎症が起きている状態になっています。

しかし、歯周病は痛みなどの自覚症状があまり感じられないため、「静かな火傷」と例えられることがあります。この静かな火傷が、何年間も起き続けていることを想像してみてください。歯周病にかかると、炎症によって身体の中でさまざまな炎症物質が作られ、細菌とともに血流に乗って全身を巡ります。

現在では、歯周病によって糖尿病や動脈硬化、肺炎、リウマチ、肝機能障害、腎機能障害、低体重児出産のリスクが上がることが分かっています。これらの病気は直接的に死に直結するものもあれば、失明などの日常生活を著しく悪化させる新たな病気につながるものもあります。

歯周病と全身の健康について

このように、ある病気が新たな病気を引き起こす負の連鎖のことを「メタボリックドミノ」と言い、歯周病はメタボリックドミノの入り口に位置する病気であると考えられています。

メタボリックドミノについて

私たちが歯周病になる理由

歯周病は「生活習慣病」です

「歯周病」について

歯周病は加齢によって起きる病気ではありません。歯周病を発症してしまう最も大きい要素は「生活習慣」です。例えば「糖尿病」の場合、約95%が食生活や運動不足などの生活習慣によって発症する「2型糖尿病」であり、先天的な「1型糖尿病」は全体の5%しかいません。歯周病の場合も先天的な原因で発症するケースは非常に少なく、仮に発症した場合は10~20歳代といった若い年齢で急速に進行し、歯槽骨の破滅的な破壊を招きます。

しかし、歯周病の多くは不適切な生活習慣が重なることにより発症し、年齢とともに不適切な習慣は蓄積していくので「加齢現象」と捉えられることが多くあります。歯周病は初期の段階では痛みなどの自覚症状がなく、専門的な検査を行わないと見過ごされてしまうことが多い病気です。しかし、日本人の成人の80%が歯周病もしくはその予備軍であることが分かっています。「自分は大丈夫」とは考えずに、気になる症状がある場合は一度精密な検査を受けることを推奨します。

多摩市歯周病疾患の結果

多摩市歯周病疾患の結果

日本人の80%が歯周病の予備軍であるというデータに対して、多摩市を含めた周辺地域の実情を調べてみました。

厚生労働省のデータによると、歯科検診に訪れた多摩市民433人のうち376人(87%)が歯周病について「要精密検査」という結果になっています。多摩市で行われる歯科検診は、6本の歯だけを調べるという簡単なものですが、その中でも数多くの方が要精密検査と判断されたということは、実際にはもっと多くの歯周病患者や歯周病予備軍の方がいるということが考えられます。

これは、決して安心していられる数字ではありません。まずはご自身の口腔内の状態を確認してもらうことを推奨します。

多摩市歯周病疾患の結果

歯周病のリスクとなる生活習慣とは

歯周病のリスクとなる生活習慣とは

歯周病が引き起こされる根本の原因は、「細菌が繁殖しやすい口腔内環境ができてしまっていること」にあります。歯周病は細菌感染症なので、細菌を口腔内から排除してしまえば良いのですが、ブラッシングがうまく行えていない状態が続いた結果、免疫機能だけでは抑えられなくなり発症してしまいます。

また、喫煙習慣も歯周病と密接に関わっていて、喫煙をしているだけで歯周病のリスクが2倍以上も上昇し、歯周外科治療の成功率も非喫煙者と比較して1/4も低下します。これは喫煙によって血管が収縮して免疫細胞の働きが悪くなったり、酸素が苦手な歯周病菌が酸素の少ない環境で繁殖しやすくなるからであると考えられています。糖尿病と歯周病もお互いに密接な関連性があり、「糖尿病になると歯周病になりやすい」「歯周病になると糖尿病になりやすい」といった相互関係があります。

歯周病を引き起こす要因
プラーク

噛み合わせ

プラークとは、何百種類もの細菌が作る「バイオフィルム」と粘膜の細胞などが混ざったものを指します。バイオフィルムは水を通しにくい物質でできており、養分を取り入れ、排泄物を捨てる上下水道のような構造があるため、細菌にとってはマンションなどの集合住宅のような存在です。

バイオフィルムの中に含まれている歯周病菌の死骸も毒性を帯びているため、炎症反応を引き起こし続けます。さらに、抗菌薬や殺菌剤などの薬剤やリンパ球などの免疫細胞はバイオフィルムを貫通できないため、歯周病が発症、悪化する最も大きな要素となっています。そのため、バイオフィルムはブラッシングなどで物理的に壊して取り除かなければなりません。

噛み合わせ

噛み合わせ

歯にはそれぞれ役割があり、全ての歯が一体となり最大で60kg以上もかかる咬合力をバランス良く分散させています。「良い噛み合わせ」とは、噛んだときに奥歯だけが当たり、前歯は紙一枚のすき間がある状態です。さらに、左右に歯ぎしりした時に前歯や犬歯だけが当たり、奥歯は隙間がある状態が正常な噛み合わせです。しかし噛み合わせが悪いと、一部の歯に負荷がかかり、歯を揺さぶってしまうことがあります。歯並びが悪かったり、歯ぎしり・食いしばりをしたり、歯を失ってしまったりすると、歯への負担が大きくなります。

すると歯と顎の骨をつないでいる「歯根膜」という腱に悪影響を与え、歯の位置や角度が変化し、噛み合わせが乱れていくことにつながります。過度の負担がかかっている部位にプラークが付着すると、歯周病が加速的に進行することが研究から分かっています。そのため、プラークコントロールを適切に行うとともに、正常な噛み合わせを作ることも大切です。

全身疾患

全身疾患

身体の病気も直接的・間接的に歯周病の原因になることがあります。例えば、鼻炎やいびきなど口で呼吸をすることが多いと歯ぐきが乾燥し、本来であれば唾液に含まれているバリア機能が正常に働かず歯肉に炎症が起きやすくなります。

リウマチなどの自己免疫疾患も、直接的・間接的に歯周病のリスクとなります。特にリウマチの場合は関節の動きが悪くなり、握る動作が難しくなることで歯ブラシが行いにくくなり、間接的に歯周病のリスクにつながっていきます。糖尿病も身体の免疫力が低下するため、歯周病のリスクを2倍以上も上昇させることが分かっています。

歯周病検査

歯周病を治療するためには、「一口腔一単位」で治療計画を立てなければなりません。当院では、歯周ポケットの精密検査にレントゲンや歯科用CTなどの画像診断を加え、より精度の高い治療計画をご提案しています。

歯周病に限らず、口腔内に関して気になることがございましたらお気軽にご相談ください。

口腔内写真撮影

口腔内写真撮影

治療のステップごとに写真を撮影し、治療開始前と治療後の状態を比較することで客観的に治療の効果が比較できるようにしています。また、その他の検査データとともにより綿密な治療計画を立案するための参考としても使用します。

歯周ポケット検査

歯周ポケット検査

歯と歯ぐきの溝である「歯周ポケット」は、歯周病の進行に合わせて深くなっていきます。プローブという器具で歯周ポケットの深さを測り、歯周病の進行状況を調べていきます。検査では、1つの歯につき6箇所調べていくため、精度の高い検査結果を得ることができます。

深さの他にも、出血や排膿の有無、歯の揺れ具合、根分岐部の状態、角化歯肉の幅、歯ぐきの付着レベル、プラークの付着量など必要に応じた検査も追加で行います。

BOP(歯肉からの出血の検査)

BOP(歯肉からの出血の検査)

すでに炎症が起きている歯ぐきは、歯周ポケット検査の際に出血します。そのため、出血の様子を確認することで炎症が起きている部分を把握することができるのです。逆に、歯周ポケットが深くなっている箇所でも出血がない場合は歯周病であるとは判断しません。

PCR(プラークの付着具合の検査)

PCR(プラークの付着具合の検査)

PCR検査「プラークコントロールレコード」の略称であり、歯周病の大きな原因であるプラークがどれくらい付着しているのかを調べます。1つの歯につき4箇所をチェックして、どれくらいの割合で磨き残しがあるのかを数値化し、ブラッシングの上達具合の指標とします。

レントゲン検査

レントゲン検査

歯周病検査には、歯科用CTやレントゲンを使った検査も不可欠です。レントゲンと聞くとX線による被曝を気にされる方もいらっしゃいますが、歯科用のレントゲン機器は被曝量が少なく、さらにデジタルレントゲンなどを使用することで被曝量は最小限に抑えています。歯科用CTは、患者様の口腔の状態に合わせて使用をします。

角化歯肉幅の検査

角化歯肉幅の検査

「角化歯肉幅」とは、硬い歯ぐきがどれくらい残っているかを示す指標です。硬い歯ぐきが多ければプラークが溜まりにくく、ブラッシングをしても痛くありません。逆に硬い歯ぐきが少ないとブラッシング時に痛いだけでなく、歯肉が退縮しやすくなり歯根が露出しやすくなることにつながります。

細菌検査

細菌検査

「侵襲性歯周炎」や「急速進行性歯周炎」といった特殊な歯周病が疑われる場合には、歯周ポケットに溜まっている浸出液を採取しPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行います。歯周組織の高度な破壊に加え、「A.a.」と呼ばれるバクテリアが検出された場合に「侵襲性歯周炎」と診断しています。

歯周病治療のゴール

歯周病治療のゴールは、「安定した歯周組織の獲得」と「歯周病の再発防止」です。歯周病は生活習慣病の1種であり、治療が終わった後も再発しないように日々のオーラルケアが大事になります。

そのためには、患者様と医療従事者双方がそれぞれの役割を理解し、二人三脚で病気に立ち向かっていかなければなりません。

  • 患者様の役割:歯周病に対する理解を深め、適切な生活習慣を実践する
  • 医療従事者の役割:安定した歯周組織を再構築し、維持していくサポートを行う
歯周病に対する理解を深め、適切な生活習慣を実践する

歯周病に対する理解を深め、適切な生活習慣を実践する

歯周病は細菌感染症であると同時に、生活習慣病でもあります。日々の生活行動であるブラッシングが不十分であったために起きてしまう場合がほとんどで、加齢や遺伝的な原因で歯周病が起こることはほとんどありません。

仮に定期的に歯科医院でクリーニングを行っていたとしても、それ以外の日はご自身で口腔ケアをする必要があります。つまり、ブラッシングが適切にできているかどうかが分かれ道と言えます。そこで歯周病の発生メカニズムに対する理解を深め、ご自身でも治療に積極的に参加して頂くことが、歯周病の克服には必要不可欠となります。

安定した歯周組織を再構築し、維持していくサポートを行う

安定した歯周組織を再構築し、維持していくサポートを行う

安定した歯周組織を獲得するためには、感染源を徹底的に除去し、再び感染が起きないような環境に整えていく必要があります。深い歯周ポケットがあると歯ブラシが届かない空間ができてしまうため、治療によって歯周ポケットを浅くしていくことが安定した歯周組織を獲得することにつながります。

歯周ポケットを浅くする方法には、歯周ポケットを切り取ってしまう「切除療法」と、骨を作って歯周ポケットを浅くする「再生療法」があります。理想的な治療方法は新たに骨を作る「再生療法」ですが、高度な知識と技術が必要な治療です。

歯槽骨を再生させる「組織工学の3要素」

歯周病によって溶けてしまった骨を再生させるには、「足場」「細胞」「成長因子」の3つを揃える必要があります。

足場…細胞ができた時に定着させるための土台
細胞…骨や歯周組織を作るための細胞
成長因子…細胞に歯周組織を作る細胞になるように命令する物質

当院では、これら3つの要素を揃えるためのマテリアルや機材を多く揃えています。ただし、どんな状況でも骨を再生できるというわけではないため、歯周病の進行具合や口腔内の状態に合わせたプランをご提案させて頂きます。

歯周病治療の流れ

歯周病とその他の歯科治療の関係性

矯正歯科治療

矯正歯科治療

矯正治療の目的は、審美面と機能面の改善が挙げられます。歯は合計で28本もありますが、一本一本にきちんとした役割があり、適切な場所に生えていることで適切な役割を果たすことができるのです。

もしも、歯並びが乱れたり歯を失ったりした場合、本来あるべき場所からなくなってしまった歯の代わりを他の歯が担わなければなりません。この役割分担がうまくいかないと、歯並びや嚙み合わせは悪化してしまうのです。

歯周病は、噛み合わせによる大きな力とプラークが重なることで急速に進行することが分かっています。これらの理由から、歯周病治療を行う際に矯正治療で咬合のバランスを改善することはとても重要です。

歯周病と矯正治療の関係について

インプラント治療

インプラント治療

歯周病が進行し、顎の骨が溶けて歯を失ってしまった場合、失った歯の代わりに何かしらの形で歯を補填する必要があります。失った歯を補う方法は、現状では「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3種類があり、その中から患者様に適切な方法を選んでいきます。

インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨にしっかりと結合した人工の歯が固定していくため、本物の歯とほとんど変わらないレベルで噛むことができます。そのため、健康な歯を削る必要もなく、歯を少しずつ失っていく「負の連鎖」も防ぐことができるのです。

インプラント治療には、土台となる歯ぐきの状態が整っていることが大切です。そのため、歯周病の患者様はまず歯周病治療を行います。また、歯周病の患者様はインプラント埋入後も歯周炎になりやすいため、定期的な予防処置が必要です。当院ではインプラント治療はもちろん、治療後のメインテナンスもしっかりとフォローするなど、歯周病専門医が包括的に治療します。

歯周病とインプラント治療について

歯周病治療について

歯周病専門医が在籍する
永山の歯医者 「福嶋歯科医院」

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