舌癌などの口腔ガンと歯周病の関連性

最近のニュースで芸能人が口腔癌のステージ4になってしまったというニュースがありました。

そこで今回は当院でも何人かの患者様から舌癌についての問い合わせがございましたので、いくつかお答えしていきます。

また歯周病と口腔ガンの関連性や統計データなどについても調べていきますのでそちらもご参考になさって下さい。

 

口腔ガンはよくある病気ですか?

口腔ガンとはお口の中(口腔)にできる悪性腫瘍の1つです。

口腔とは「舌」や「頬」の他に「歯肉」「顎の骨」などいくつかのパーツに分けられますが、簡単に言うと首から上、脳より下にできるものを指しているとお考えください。

体の中にできる腫瘍には悪性のものと良性のものがあり、どちらも本来は体に無いものが体の中にできてしまっていることに変わりはありませんが、その病態の広がり方などによって悪性、良性と区別されます。

癌は腫瘍の中でも悪性のものを指します。

 

ここで1つデータを見てみましょう。

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上の図は2014年に国立がんセンターが出した統計データです。

このデータはおよそ2万人を対象に行った調査で、どれくらいの割合の人が口腔ガンに罹患しているかを調べたものです。

 

これによると60歳代から急激に口腔ガンの罹患率が増え、およそ30%の人が口腔ガンになっていることが分かります。

つまり口腔癌は3人に1人、誰にでも起こり得る病気と考えて良いのではないでしょうか。

 

口腔癌になるとどれくらいの確率で死亡しますか?

こちらもよくある質問の1つでしたので統計データを元にお答えします。

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まずは上の表をご覧下さい。

こちらも2013年に国立がんセンターが出したデータです。

 

日本人に多い「胃がん」や「結腸がん」は死亡率がおよそ40%ほどですが、口腔ガンは死亡率がそれより高いことが分かります。

ではさらにもう一つデータを見て見ましょう。

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こちらは口腔ガンによる死亡率が1998年以来どのように変化しているかを表したものです。

これによると男女ともに口腔ガンによる死亡率が増加しており、特に男性は1%台から9%近くへと9倍にも跳ね上がっています。

ちなみにこのデータが2013年のデータと大きく数値の差がある理由は、2013年のデータは口腔ガンになってしまった場合の死亡率、上の図は癌全体の中で口腔ガンによる死亡率を表しているからです。

つまり口腔ガンは全体の癌としては1割弱しか占めていませんが、口腔ガンになってしまうと死亡率が高い病気だということが言えます。

では、次にステージ別に比較をしていきましょう。

癌というのは進行度によって大きく「ステージ0 ~ ステージ4」の5つに分類されます。

各ステージの分類を以下に簡単にまとめますね。

  • ステージ0:ガン細胞が上皮内にとどまっていて、リンパ節などに転移していない。
  • ステージ1:ガン細胞が上皮層を突き破っているが、筋肉の層にとどまっている状態かつリンパ節へ転移していない。
  • ステージ2:癌が筋肉の層を超えて、リンパ節へ転移しかけている状態。
  • ステージ3:リンパ節へ転移してしまった状態。
  • ステージ4:ガン細胞が他の臓器へ転移してしまった状態。

一般的にステージが上がるごとに死亡率も高くなってしまうのが特徴です。

 

ではこちらのデータをご覧下さい。

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上の図は口腔ガンの各ステージごとの5年生存率を調べたものです。

 

念のためにご説明しますと「生存率」とはしかるべき治療を行って生き延びた場合にその後も生き延びられる確率のことです。

なぜ「5年生存率」なのかというと統計的に5年経っても問題なければ、その後も癌が再発する可能性は低いでしょうという考え方があるからです。

この図によるとやはりステージが上がるごとに5年生存率が低くなっています。

しかし、ステージ4でも生存率が50%以上あることを考えると決して低い数字というわけではないようです。

 

口腔ガンになると生活にどういう影響がありますか?

みなさんはQOLという言葉をご存知でしょうか?

QOLとはQuality of Lifeの略で「生活の質」「生命の質」と訳されます。

Lifeという単語は“生活”とも“生命”とも訳せるのでどちらがより的確な訳かという議論もありますが、とにかく人が人らしく生きていられることを指す言葉です。

そして、口腔ガンはこのQOLと密接に関わって来る病気といえます。

 

例えば、癌という病気が悪性度が高いとされる理由の1つとして「周囲の組織に染み込むように広がっていく」というのがあります。ガン本体から飛び火したように広がるのです。

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このため、ガンを切除する際には「安全域」といってガン本体からおよそ2センチほど離れた場所まで含めて取り除きます。つまりガンを中心として上下左右2㎝ずつ、直径4㎝以上切除しなければなりません。

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胴体の4㎝と顔の4㎝とでは大きさの感覚が全く異なります。

例えば左顎にできた小さな口腔癌を切除することになったとしても、顎を半分切除しなければならないくらいのダメージになってしまうのです。

顎を半側切除した場合、なるべく見栄えをよくするために義手や義足のように顎の形をした人工物を装着したり、場合によっては「再建術」といって体の他の部分から組織をもらって失われた部分に移植したりします。

 

実際に私の後輩に「舌癌」のステージ4になってしまったのがおりますが、舌を半分以上切り落とさなければならず、その後に左腕の前腕の皮膚の薄いところから少し組織をもらって、舌に移植していました。

話し方はゆっくりでしたがきちんと発音もできていて仕事も相変わらず続けていたので生活に問題は内容でしたが、おそらく食事では以前のように味を感じられないのでは無いかと思いました。今は術後5年経つまで毎月検診に行き癌が再発しないことを祈っている日々です。

 

このように舌癌や顎骨癌などの口腔ガンは治療後の日常生活へのダメージが大きいため他の癌と同様、「早期発見」と「早期治療」が非常に大切です。

 

口腔癌を見つけるにはどうしたらいいですか?

他の癌同様、口腔癌を一般の方が見つけるのは非常に難しいです。私たち歯科医師ですら口腔癌をガンとして認識するにはトレーニングが必要ですし、そもそも顎の中にできている癌はレントゲンなどを撮影しなければ見つけることは出来ません。

当院ではアメリカからVel Scopeという機器を輸入して口腔ガンを早期に発見できるようにしています。

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この装置は癌が作り出す特有の構造に特定の波長の光を当てることで探し出せるというものです。

実際に癌がある部位に光を当てると下の写真のように黒く映し出されます。

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上の写真は唾液腺に出来た腫瘍です。

口腔ガン検診に関しては簡単にまとめたものがありますので、下のPDFファイルを参考になさって下さい。

口腔がん検診パンフ

 

歯周病と口腔癌に関連性はありますか?

歯周病の研究はまだまだ深いところまでされているとは言えず、これから研究が進んでいく分野です。

なかでも歯周病が他の病気と関連しているということが最近分かってきています。

こちらに関しては以下のリンクをご参考にして下さい。

多摩市永山駅から徒歩8分の歯医者なら福嶋歯科医院

 

 

 

 

30代からこそ行うべき歯周病予防

 

歯周病とは歯周病は「歯の周りの病気」と書くように歯根の周囲に広がる感染症の1つです。感染症が起きると体の中で免疫反応や炎症反応が起きますが、じつはこの炎症反応…

 

一般的な概念として、「お酒」や「タバコ」は癌の発生リスクを上昇させるというのが分かっています。

過度の飲酒や喫煙をすることによって、細胞の中の遺伝子が「メチル化」された状態になります。

メチル化とはつまり普通の状態ではなくなってしまうことです。

 

遺伝子がメチル化すると、細胞分裂が正常に出来なかったりタンパク質の合成がうまく出来なかったりします。

その結果、普通とは違った構造の細胞が複製されることになるのです。

しかも一度遺伝子がメチル化が起きてしまうと元に戻らないと言われています。

 

こういった過度の飲酒や喫煙が長年続くことで細胞の中の遺伝子が正常でなくなって行き、癌化してしまうのではと考えられているのです。

 

そして近年、「歯周病を放置」することによっても細胞のメチル化が起きるのでは無いかという考えが出て来るようになりました。

歯周病菌の中には「硫化水素」などの毒性の強いガスを発生させるものがいます。これが歯周病特有の口臭の原因だったりするのですが、こういったバクテリアの作り出す毒素が細胞を正常ではない構造にしてしまう可能性があるのです。

 

つまり、糖尿病や心筋梗塞といったすでに分かっている病気と同じく歯周病によって口腔癌のリスクが高まる可能性は十分にあるのです。

 

これについてはまだ研究が始まったばかりですので、詳細なデータをお出しすることは出来ませんが、私の見解としては歯周病と口腔癌に関連性があるのが自然なことだと考えています。

 

舌癌などの口腔癌と歯周病との関連についてのまとめ

舌癌に限らずお口やお顔にできる「口腔ガン」はQOLを著しく低下させる病気です。

しかも口腔ガンに罹患する割合は年々増え、特に男性で顕著に増加しています。

年齢別では50歳台から急激に口腔癌の罹患率が上昇します。

口腔ガンは死亡率の比較的高い癌に分類されますが、早期発見と早期治療を行なっていくことで5年生存率を高めることが出来ます。

そのため、口腔癌を早期に発見することが重要で、口腔癌検診を行なっている歯科医院での診断が必須です。

さらに歯周病と口腔ガンは関連性があるのでは無いかという考えが医療従事者の中で常識化しつつありますので、歯周病もしっかりと治療・ケアして行きましょう。

 

当院は多摩市にある歯科医院ですので、多摩市やその周辺地域にお住いの方はぜひ当院の口腔癌検診をご利用ください。

Vel Scopeを使った検診は3000円(税抜き)となっております。

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