リグロスはエムドゲインより優れている?比較試験のデータを歯周病専門医が読み解く

  • TOP
  • 医院からのお知らせ
  • リグロスはエムドゲインより優れている?比較試験のデータを歯周病専門医が読み解く

リグロスとエムドゲインの比較試験を歯周病専門医が読み解く

歯周病で失われた骨を取り戻す「歯周組織再生療法」では、主に「エムドゲイン」と「リグロス」という2つの材料が使われています。リグロスは保険診療で、エムドゲインは自費診療です。

「リグロスのほうがエムドゲインより骨が増えるというデータがある」と聞いて、どちらを選べばよいか迷われている方もいらっしゃると思います。この記事では、2つを直接比べた臨床試験のデータを、歯周病専門医の立場から読み解き、当院がエムドゲインを主に用いている理由をご説明します。

この記事のポイント

  • 比較試験では、リグロスがエムドゲインを骨の量で平均0.6mm上回ったと報告されています
  • ただし0.6mmは、1mm刻みの臨床の計測では誤差の範囲に入りうる小さな差です
  • 2つの群では骨欠損の形に統計的に有意な偏りがあり、エムドゲイン群が不利な条件でした
  • 当院では長期の臨床データが豊富なエムドゲインを主に用いています

比較試験の結果:リグロスが平均0.6mm上回った

リグロスの承認時に行われた臨床試験では、深さ4mm以上の垂直性の骨欠損がある患者さんを、リグロスを使う群(108人)とエムドゲインを使う群(109人)に分けて、手術から36週後の骨の増え方をレントゲン写真で比べています。

リグロスとエムドゲインの比較試験の結果。新しくできた骨の量は平均0.6mm、付着の回復量は平均0.4mmの差
  • 新しくできた骨の量:リグロス群がエムドゲイン群を平均0.6mm上回った(統計的に有意)
  • 歯ぐきの付着の回復量:リグロス群が平均0.4mm上回った

この結果から「リグロスはエムドゲインより優れている」と説明されることがあります。リグロスは、何も塗らない手術と比べて骨の再生を促すことも確認されている、有効な材料です。そのうえで、エムドゲインとの比較については、次の2つの点に注意して読む必要があると当院は考えています。

注意点①:0.6mmの差は臨床的に意味のある差か

歯周病の診療で歯ぐきの溝の深さを測る器具(プローブ)は、1mm単位の目盛りです。レントゲン写真での計測にも、撮影の角度などによる誤差があります。歯周病の臨床では、1mmに満たない差は測定の誤差の範囲に入りうるため、患者さんが実感できる違いとは考えにくいのが実情です。

統計的に「差がある」ことと、治療の結果として「意味のある差がある」ことは、分けて考える必要があります。

注意点②:2つの群で骨欠損の形に大きな偏りがあった

骨がどれだけ再生するかは、骨欠損の形に大きく左右されます。欠損を囲む骨の壁が多いほど(3壁性>2壁性>1壁性)、骨は再生しやすくなります。ところが、この試験では2つの群で骨欠損の形の割合が大きく異なっていました。

骨欠損の壁の数(1壁性・2壁性・3壁性)と再生のしやすさの模式図
骨欠損の形 リグロス群(108人) エムドゲイン群(109人)
3壁性 39人(36.1%) 34人(31.2%)
2・3壁性 38人(35.2%) 22人(20.2%)
2壁性 28人(25.9%) 38人(34.9%)
その他(1壁性・4壁性など) 3人(2.8%) 15人(13.8%)
リグロス群とエムドゲイン群の骨欠損の形の内訳を比べたグラフ

再生しやすい「3壁性」「2・3壁性」はリグロス群に多く(71%対51%)、再生しにくい「1壁性」を含む「その他」はエムドゲイン群に約5倍多く含まれていました。当院でこの分布の差を統計的に検定したところ、偶然では説明しにくい偏り(p=0.003)でした。また、骨欠損の深さや術前の歯周組織の状態も、わずかにエムドゲイン群のほうが重い傾向でした。

つまりエムドゲイン群は、もともと骨が再生しにくい条件の患者さんが多い中で比べられていたことになります。0.6mmという差の一部は、材料の違いではなく、この条件の違いによって生じた可能性があります。

当院がエムドゲインを主に用いている理由

以上のように、この試験の結果だけで「リグロスのほうが優れている」と結論づけることはできないと当院は考えています。そのうえで、当院では次の理由から、歯周組織再生療法にはエムドゲインを主に用いています。

  • 1990年代から世界中で使われており、長期にわたる臨床データが豊富に蓄積されていること
  • 骨欠損の形や大きさに応じて、骨補填材と組み合わせた治療を行いやすいこと(当院では、骨の再生のスペースを保つためにウシ骨由来の骨補填材を併用しています)
歯周組織再生療法の流れの模式図(診査・診断、歯ぐきを開き清掃、再生材料を塗布、骨補填材を充填、縫合・経過観察)

どの材料が適しているかは、骨欠損の形や歯の状態によって異なります。当院では、CTやレントゲンで骨欠損の形を確認したうえで、患者さんごとに最適な方法をご提案しています。

費用とリスクについて

エムドゲインを用いた再生療法は自費診療(公的医療保険の適用外)です。費用は料金表と「エムドゲインにかかる費用と術後の経過」でご案内しています。

外科処置のため、術後に腫れや痛み、内出血が出ることがあります。また、骨の再生量には個人差があり、骨欠損の形や喫煙・歯みがきの状態などによっては、十分な再生が得られない場合があります。

関連ページ:再生療法について/エムドゲインとバイオオスを使った歯周組織の再生治療(症例)

出典:科研製薬株式会社「リグロス歯科用液キット」製品情報概要(2024年10月作成)第Ⅲ相試験(エナメルマトリックスデリバティブ対照比較試験、非劣性試験)

執筆:福嶋太郎(福嶋歯科医院 院長/日本歯周病学会 歯周病専門医)

歯周病なら多摩市永山の歯医者「福嶋歯科医院」

歯周病なら多摩市永山の歯医者「福嶋歯科医院」

〒206-0023
東京都多摩市馬引沢2-3-29 MAHIKIZAWA F1階

  • 【月・火・水・木・土・日】
    8:30~13:00 / 14:30~18:00
  • 【金】
    9:30~13:00 / 14:30~19:00
  • 【休診】祝日

歯周病専門医が在籍する
永山の歯医者 「福嶋歯科医院」

WEB診療予約