
インプラント周囲炎は、インプラントを支える歯ぐきや骨に炎症が起こる病気で、「歯周病のインプラント版」と考えるとわかりやすい病気です。この記事では、インプラント周囲炎の段階と、実際にどれくらいの人がなるのかを、海外の研究データをもとに歯周病専門医が解説します。
この記事のポイント
- インプラント周囲炎には、歯ぐきだけの炎症「インプラント周囲粘膜炎」と、骨まで溶ける「インプラント周囲炎」の2段階がある
- 複数の研究をまとめた分析では、インプラントを入れた方のおよそ2割がインプラント周囲炎になると報告されている
- 粘膜炎はさらに多く、インプラントを入れた方のおよそ半数近くに見られる
- インプラント周囲炎の多くは、かぶせ物を入れてから3年以内に始まっている
インプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎は、インプラントの周りに付いた細菌によって炎症が起こり、インプラントを支える骨が失われていく病気です。天然の歯の歯周病と同じように、段階があります。
歯肉炎
・インプラント:インプラント周囲粘膜炎
・状態:歯ぐきだけに炎症がある。骨は溶けていない。治療で元に戻せる
歯周炎(歯周病)
・インプラント:インプラント周囲炎
・状態:炎症が骨まで広がり、インプラントを支える骨が溶けている
2つは名前が似ていますが、骨が溶けているかどうかという大きな違いがあります。症状や治療法については「インプラント周囲炎」のページで詳しく紹介しています。
どれくらいの確率でなる?
インプラント周囲炎の発生率は、研究ごとに数字がばらつきます。病気の判定基準(骨がどれだけ減ったら周囲炎とするか)や、調査した期間、対象の方が違うためです。そこで、多くの研究をまとめて分析した結果(メタ分析)を見てみましょう。
Lee ら(2017年)47研究のメタ分析
患者さん1人あたり
・インプラント周囲粘膜炎:約47%
・インプラント周囲炎:約20%
インプラント1本あたり
・インプラント周囲粘膜炎:約29%
・インプラント周囲炎:約9%
Derks ら(2015年)
メタ分析
・集計の単位:患者さん1人あたり
・インプラント周囲粘膜炎:約43%
・インプラント周囲炎:約22%
Mombelli ら(2012年)
23研究のレビュー
・集計の単位:埋入後5〜10年
・インプラント周囲粘膜炎:―
・インプラント周囲炎:患者さんの約20%、インプラントの約10%
出典:Lee CT, et al. J Dent. 2017;62:1-12/Derks J, Tomasi C. J Clin Periodontol. 2015;42(Suppl 16):S158-S171/Mombelli A, et al. Clin Oral Implants Res. 2012;23(Suppl 6):67-76
研究によって数字に幅はありますが、インプラントを入れた方のおよそ5人に1人がインプラント周囲炎になるというのが、おおよその目安です。また、Lee らの分析では、インプラントを使っている期間が長いほど、インプラント周囲炎の割合が高くなることも示されています。
いつ始まることが多い?
スウェーデンで行われた調査では、中等度〜重度のインプラント周囲炎になった方の81%は、かぶせ物を入れてから3年以内に骨の吸収が始まっていました。また、骨の減り方は一定ではなく、時間とともに加速していく傾向がありました。
出典:Derks J, et al. Peri-implantitis – onset and pattern of progression. J Clin Periodontol. 2016;43:383-388
「入れてしばらくは大丈夫」ではなく、インプラントを入れた直後から定期的なメンテナンスで状態を確認していくことが大切です。
インプラント周囲炎を防ぐために
- 毎日のセルフケアで、インプラントの周りの汚れを落とす(インプラント周囲炎を防ぐセルフケア方法)
- 定期的なメンテナンスで、出血や骨の変化をチェックする
- 残っている歯の歯周病を治療・管理する
- 出血や腫れに気づいたら早めに受診する(インプラント周囲炎の初期症状)
動画でも解説しています
関連ページ:インプラント周囲炎/インプラント周囲炎になる原因/インプラント周囲炎は治らない?/インプラント周囲炎を放置するとどうなる?
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