
下の前歯のガタガタ(叢生)が気になっていた30代の男性の患者さんに、マウスピース型矯正装置「インビザラインGO」で部分矯正を行った症例です。歯の表面をスキャンした3Dデータで、治療前と治療後を比べてご紹介します。
症例の概要
| 患者さん | 30代・男性 |
|---|---|
| 主訴 | 下の前歯のガタガタが気になる/前歯全体の並びが気になる/歯みがきがしにくい |
| 診断 | 下の前歯の叢生(1本が歯並びの外側に押し出され、前歯が重なって並んでいる状態) |
| 治療内容 | マウスピース型矯正装置「インビザラインGO」による部分矯正 |
| 治療期間 | 約5か月(アライナー15枚) 2023年5月 口腔内スキャン・診断 2023年6月〜11月 マウスピースによる矯正 2023年11月 リテーナー(ビベラリテーナー)をお渡しして終了 |
| 費用 (税込) |
572,000円(自由診療) ※現在の料金です。診断料・アライナー・調整料・リテーナーを含みます。矯正中の定期的なクリーニングは保険診療で別途費用がかかります。 |
治療前の状態
下の前歯のうち1本が、歯並びの列から外側(唇側)に押し出され、まわりの前歯も重なり合って並んでいました。重なっている部分は歯ブラシやフロスが届きにくく、歯石や汚れがたまりやすい状態でした。
大人になってからの歯並びの乱れは、見た目の悩みだけでなく、歯周病のリスクにもつながります。汚れが落としにくい場所があると、歯ぐきの炎症が起きやすくなるためです。
治療計画(シミュレーション)
マウスピース矯正では、治療を始める前に、口腔内スキャナーで撮った歯型のデータをもとに「どの歯を、どの順番で、どれだけ動かすか」をコンピューター上で計画します。下の動画は、この患者さんの実際の治療計画(クリンチェック)を、マウスピース1枚ごとに再生したものです。
▶ 再生ボタンを押すと、マウスピース1枚ごとに歯が動いていく様子をご覧いただけます(約16秒)。
※治療計画のシミュレーションです。実際の治療結果とは異なる場合があります。
下の前歯のガタガタを解消するための計画
この患者さんは、下の前歯のうち1本が歯並びの列から外側に押し出され、まわりの前歯と重なっていました(叢生)。歯がきれいに並ぶには、その歯が入るためのスペースが必要です。
そこで、歯と歯の間をごくわずかに削って整える「IPR(ディスキング)」を行ってスペースをつくり、外側に出ていた歯を少しずつ歯列のアーチの中へ戻していく計画を立てました。あわせて上の前歯の並びも整え、上下のかみ合わせのバランスをとっています。
この方法の大きな利点は、歯を抜かずに治療できたことです。IPRで削るのは歯の表面のエナメル質のごく一部で、1か所あたり0.5mm以下が一般的な目安です。削った面はなめらかに仕上げます。
マウスピース1枚で動かす量はごくわずかです。15枚のマウスピースを約10日ごとに交換しながら、約5か月かけて少しずつ歯を動かしました。
動画の見どころ
- 上の「アライナー〇枚目」:何枚目のマウスピースで、歯がどこまで動くかを示しています。
- 歯の表面の赤い突起:「アタッチメント」と呼ばれる小さな突起です。マウスピースが歯をしっかりつかみ、狙った方向へ動かすために付けます。動画では見やすいよう赤く表示していますが、実際は歯に近い色の樹脂で目立ちにくく、治療が終わったら取り外して歯の表面を磨きます。
治療を始める前にゴールを確認できます
当院では、治療を始める前にこのシミュレーションを患者さんと一緒に画面で確認し、「どの歯が、どのくらい、どんな順番で動くのか」「マウスピースは何枚で、期間はどのくらいか」をご説明します。仕上がりのイメージを確かめ、納得していただいてから治療を始めます。
「下の前歯の重なりが気になる」「歯を抜く矯正には抵抗がある」「歯みがきがしにくい」など、気になる歯並びがあればお気軽にご相談ください。歯周病の検査とあわせて、マウスピース矯正が向いているかどうか、抜歯をせずに治療できるかを診断します。
治療後の状態
下の前歯の重なりがなくなり、上下とも歯列がアーチ状にそろいました。歯と歯の間にフロスや歯ブラシを通しやすくなり、毎日のセルフケアがしやすい歯並びになっています。




※画像は口腔内スキャナーで撮影した3Dデータです。治療前と治療後でスキャンした範囲が少し異なります。
リテーナーはなくさないように
この患者さんは、治療後にリテーナーを紛失されたため、歯が元の位置に戻ってしまわないよう、すぐに新しいリテーナーを作り直しました。矯正直後の歯は動きやすく、リテーナーを使わない期間が続くと後戻りの原因になります。外したリテーナーは必ず専用のケースに入れ、なくしたり壊れたりしたときは早めにご連絡ください。
大人の部分矯正と歯周病
歯並びが整うと、歯みがきやフロスがしやすくなり、歯周病の予防に役立ちます。一方で、歯周病がある状態のまま歯を動かすと、歯を支える骨がさらに失われるおそれがあります。当院では、矯正を始める前に歯周病の検査を行い、必要があれば先に歯周病の治療を行ってから歯を動かします。詳しくは「歯周病と矯正治療」をご覧ください。
費用
| 治療内容 | 費用 (税込) |
|---|---|
| インビザラインGO(診断料・アライナー・調整料・リテーナーを含む) | 572,000円 |
| インビザラインGO Plus(同上) | 693,000円 |
- 治療期間の目安:GO 約3〜10か月/GO Plus 約6〜12か月(13歳以上が対象)
- 矯正中の定期的なクリーニング・歯周病の検査は、保険診療で別途費用がかかります。
リスク・副作用
- 新しいマウスピースに替えた数日間は、痛みや違和感が出ることがあります。
- 歯ぐきが下がる、歯の根が短くなる、歯と歯の間にすき間ができることがあります。
- IPR(歯と歯の間をわずかに削る処置)を行った場合、一時的に冷たいものがしみることがあります。
- 歯周病がある場合、治療中に悪化することがあります。その場合は矯正をいったん中断します。
- 装着時間が短いと、計画どおりに歯が動きません。
- リテーナーを使わないと、歯並びが元に戻ることがあります。
インビザラインについて(未承認医療機器に関する説明)
- インビザラインのマウスピース型矯正装置(完成物)は、医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を受けていない矯正装置です。
- 入手経路:米国アライン・テクノロジー社の製品を、同社の日本法人(インビザライン・ジャパン)を通じて入手しています。
- 国内の承認医療機器等の有無:マウスピース型矯正装置の材料として薬機法の承認を受けたものはありますが、インビザラインの装置(完成物)としての承認はありません。
- 諸外国における安全性等:インビザラインは米国アライン・テクノロジー社(1997年創業)が開発した矯正システムで、1998年に米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けています。同社の年次報告書によると、これまでに世界で2,200万人以上が治療を受けており、100か国以上で提供されています(2025年末時点)。
- 未承認の医療機器のため、万が一重い副作用が生じた場合に、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
関連ページ
※掲載している症例は、患者さんの同意を得て掲載しています。治療の効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。
執筆:福嶋歯科医院 院長 福嶋 太郎(日本歯周病学会 歯周病専門医)
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