歯周病でもマウスピース矯正(インビザライン)はできる?向いている人・注意点を歯周病専門医が解説

「歯周病があるけれど、目立たないマウスピース矯正(インビザラインなど)で歯並びを治せますか?」というご相談をよくいただきます。結論からいうと、歯周病の治療で炎症が落ち着いていれば、マウスピース矯正ができる場合があります。ただし、向いているケースと向いていないケースがあります。歯周病専門医の立場から解説します。

この記事のポイント

  • マウスピース矯正を始める前に、歯周病の治療を終えておくことが前提です
  • 取り外して歯みがきができるので、歯ぐきを清潔に保ちやすいのが利点です
  • 骨が大きく失われた歯を大きく動かす場合などは、ワイヤー矯正の方が向いていることがあります
  • 矯正中・矯正後も、歯周病のチェックと保定(リテーナー)が欠かせません

歯周病があっても矯正はできる?

歯周病で歯を支える骨が減ると、前歯が出てきたり、すき間ができたりと、歯並びが変わることがあります。こうした歯並びは、歯周病の治療で炎症を落ち着かせたあとであれば、矯正治療で整えられる場合があります。

ヨーロッパ歯周病学会(EFP)のガイドラインでも、歯周治療の目標(出血をともなう5mm以上の歯周ポケットや、6mm以上の歯周ポケットがない状態)を達成してから矯正治療を行うことが推奨されています(1)。炎症が残ったまま歯を動かすと、骨がさらに失われるおそれがあるためです。

マウスピース矯正のメリット

  • 歯みがきがしやすい:装置を外して歯みがきやフロスができるので、ワイヤー矯正より汚れを落としやすくなります。
  • 目立ちにくい:透明な装置なので、人前でも気になりにくいです。
  • 弱い力で少しずつ動かす:1枚ごとに少しずつ歯を動かす仕組みです。

マウスピース矯正が向かない場合

一方で、次のような場合は、マウスピース矯正だけでは難しいことがあります。

  • 歯を支える骨が大きく失われていて、歯を大きく動かす必要がある
  • 奥歯を含めた、かみ合わせ全体の大きな改善が必要
  • 1日20〜22時間の装着を続けるのが難しい

EFPのガイドラインでは、重度の歯周炎の方の矯正には、取り外し式より固定式の装置(ワイヤー矯正など)が提案されています(1)。マウスピース矯正が向いているかどうかは、骨の状態と歯の動かし方をみて判断します。

再生療法を行った場合の矯正のタイミング

骨が縦に深く失われた部分には、矯正の前にエムドゲインなどを使った再生療法を行うことがあります。EFPのガイドラインでは、再生療法の1〜6か月後に矯正を始めることが提案されています(1)。再生療法の4週間後に矯正を始めても、6か月後に始めた場合と比べて1年後の結果に大きな差はなかったという研究もあります(2)。

矯正中・矯正後に大切なこと

  • マウスピースを外したら、歯みがきとフロス・歯間ブラシをしてから装着する
  • 水以外の飲み物はマウスピースを外して飲む(むし歯や着色の原因になります)
  • 矯正中も歯周病のチェックを受ける。悪化した場合は矯正をいったん止めて歯周病の治療を優先します
  • 矯正後はリテーナー(保定装置)を使い続ける。歯周病で支えが弱くなった歯は元に戻りやすいためです

当院のマウスピース矯正(インビザラインGO・GO Plus)の費用

治療内容 費用
(税別)
税込
インビザラインGO(診断料・アライナー矯正料・ビベラリテーナーを含む) 520,000円 572,000円
インビザラインGO Plus(診断料・アライナー矯正料・ビベラリテーナーを含む) 630,000円 693,000円
インビザライン(奥歯を含む全体の矯正) 矯正歯科医の診断のうえご相談
  • 治療期間の目安:GOは約3〜10か月、GO Plusは約6〜12か月/GOは前歯から小臼歯まで、GO Plusは第一大臼歯までの部分的な矯正(13歳以上)
  • 矯正治療は自由診療です。矯正前の歯周病治療は、内容により保険診療または自由診療となります。矯正中の定期的なクリーニング・歯周病の検査は、保険診療で別途費用がかかります。

リスク・副作用

  • 新しいマウスピースに替えた数日間は、痛みや違和感が出ることがあります。
  • 歯ぐきが下がる、歯の根が短くなる、歯と歯の間に黒いすき間ができることがあります。
  • 歯周病が悪化した場合は、矯正を中断することがあります。
  • 装着時間が短いと、計画どおりに歯が動きません。
  • リテーナーを使わないと、歯並びが元に戻ることがあります。

インビザラインGOについて(未承認医療機器に関する説明)

  • インビザラインのマウスピース型矯正装置(完成物)は、医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を受けていない矯正装置です。
  • 入手経路:米国アライン・テクノロジー社の製品を、同社の日本法人(インビザライン・ジャパン)を通じて入手しています。
  • 国内の承認医療機器等の有無:マウスピース型矯正装置の材料として薬機法の承認を受けたものはありますが、インビザラインの装置(完成物)としての承認はありません。
  • 諸外国における安全性等:インビザラインは米国アライン・テクノロジー社(1997年創業)が開発した矯正システムで、1998年に米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けています。同社の年次報告書によると、これまでに世界で2,200万人以上が治療を受けており、100か国以上で提供されています(2025年末時点)。
  • 未承認の医療機器のため、万が一重い副作用が生じた場合に、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

まとめ

歯周病があっても、治療で炎症を落ち着かせれば、マウスピース矯正で歯並びを整えられる場合があります。ただし、骨の状態によってはワイヤー矯正の方が向いていることもあります。まずは歯周病の検査を受け、矯正ができる状態かどうかを確認しましょう。

歯周病と矯正治療の考え方や治療の流れは、「歯周病と矯正治療」のページで詳しく解説しています。

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参考文献

  1. Herrera D, et al. Treatment of stage IV periodontitis: The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2022;49(Suppl 24):4-71.
  2. Jepsen K, et al. The effect of timing of orthodontic therapy on the outcomes of regenerative periodontal surgery in patients with stage IV periodontitis: A multicenter randomized trial. J Clin Periodontol. 2021;48(10):1282-1292.

執筆:福嶋歯科医院 院長 福嶋 太郎(日本歯周病学会 歯周病専門医)

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