歯髄温存療法とは?

「虫歯が神経まで達しているので、神経を取りましょう」と言われたことはありませんか。虫歯が深くても、条件によっては神経を残せる場合があります。それが「歯髄温存療法」です。この記事では、歯髄温存療法とはどんな治療か、神経を残すことのメリット、治療の流れを歯周病専門医が解説します。

この記事のポイント

  • 歯髄温存療法は、虫歯が深く神経(歯髄)が露出した場合でも、神経を取らずに残す治療
  • MTAセメントという材料で露出した神経を覆い、守る
  • 研究では、MTAを使うと治療後4〜5年で約8割の歯で神経を健康に保てたと報告されている
  • 神経を残すと、歯が割れにくく、歯の寿命を延ばすことにつながる

歯髄温存療法とは

歯の中には、神経と血管が通る「歯髄(しずい)」があります。虫歯が深く進んで歯髄が露出すると、これまでは神経を取る治療(抜髄・根管治療)を行うのが一般的でした。

歯髄温存療法は、虫歯を取り除いた際に神経が露出しても、条件が整っていれば神経を取らずに残す治療です。露出した部分をMTAセメントという特殊な材料で覆い、神経を守ります。一般に、露出した部分が小さい(直径2mm程度以下)ほど、神経を残せる可能性が高くなります。

MTAセメントとは

MTAセメントは、ケイ酸カルシウムを主成分とする歯科用の材料です。体になじみやすく、すき間をしっかり封鎖でき、抗菌性もあります。MTAで覆った部分には、数か月かけて新しい象牙質(歯の硬い組織)が作られ、神経を守る壁ができます。

神経を残せる割合

虫歯で神経が露出した大人の歯を対象に、複数の研究をまとめた分析では、MTAを使った場合、従来の材料(水酸化カルシウム)よりも高い割合で神経を健康に保てていました。

6か月

・MTA:91%

・水酸化カルシウム(従来の材料):74%

1年

・MTA:86%

・水酸化カルシウム(従来の材料):65%

2〜3年

・MTA:84%

・水酸化カルシウム(従来の材料):59%

4〜5年

・MTA:81%

・水酸化カルシウム(従来の材料):56%

出典:Cushley S, et al. Efficacy of direct pulp capping for management of cariously exposed pulps in permanent teeth: a systematic review and meta-analysis. Int Endod J. 2021;54(4):556-571(虫歯で神経が露出した大人の歯を対象とした14研究のメタ分析。数値は神経が健康に保たれていた割合)

神経を残すメリット

歯に栄養と水分が届き、しなやかさが保たれる

栄養が届かなくなり、枯れ枝のようにもろく、割れやすくなる

しみる・痛むなどの感覚で、虫歯などの異常に気づける

感覚がなくなり、虫歯の再発に気づきにくい

削る量が少なく、歯を多く残せる

根の治療で削る量が増え、多くの場合かぶせ物が必要になる

根の先に膿がたまるリスクが低い

根の中に細菌が残ると、根の先に膿がたまる(根尖性歯周炎)ことがある

歯が割れると抜歯になることが多く、神経を残せるかどうかは、その歯の寿命に大きく関わります。

治療の流れ

1. 診査・診断

痛みの出方やレントゲンで、神経が残せる状態かを判断する

2. 虫歯の除去

拡大鏡を使い、神経を刺激しないよう少しずつ虫歯を取り除く。ラバーダムで唾液の細菌が入るのを防ぐ

3. MTAで覆う

露出した神経をMTAセメントで覆い、封鎖する

4. 経過観察・かぶせ物

神経の状態を確認したうえで、詰め物・かぶせ物で仕上げる

神経を残せないこともあります

何もしなくてもズキズキ痛む状態が続いている場合や、細菌が神経の奥まで入り込んでいる場合は、神経を残すことが難しく、根管治療が必要になります。また、治療後に痛みが続き、あとから神経を取る治療が必要になることもあります。メリット・デメリットの詳細は「歯髄温存療法のメリット・デメリットとは?」をご覧ください。

動画でも解説しています

関連ページ:歯の神経の温存療法/歯髄温存療法の費用/歯髄温存療法の痛みはいつまで続くか?

執筆:福嶋太郎(福嶋歯科医院 院長/日本歯周病学会 歯周病専門医)

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