
「歯周病に抗生物質のアジスロマイシンが効く」と聞いたことがある方もいるかもしれません。抗菌薬(抗生物質)は歯周病の治療に使われることがありますが、薬だけで歯周病が治るわけではありません。この記事では、アジスロマイシンの歯周病への効果と限界、当院での使い方を歯周病専門医が解説します。
この記事のポイント
- アジスロマイシンには、歯ぐきの腫れや膿を一時的に抑える効果がある
- 歯周病菌は歯石や細菌の膜(バイオフィルム)に守られているため、薬だけでは根本的に治らない
- 国際的なガイドラインでも、抗菌薬は「すべての人に使うものではなく、一部の患者さんで検討するもの」とされている
- 当院では、FMD治療の一環や、侵襲性歯周炎の治療で併用している
アジスロマイシンの効果は「一時的」
歯周病が進んでいる部位では、歯の周りについた汚れが原因で歯ぐきが腫れたり、膿が出たりします。アジスロマイシンを飲むと、こうした急な腫れや膿を一時的に抑える効果が期待できます。
しかし、その効果は永久に続くわけではありません。原因である歯石や汚れが残っていれば、薬の効果が切れたあと再び炎症が起こります。
薬だけで歯周病が治らない理由
歯周病菌は、歯の表面や歯ぐきの中の歯石にくっつき、「バイオフィルム」と呼ばれる細菌の膜をつくって身を守っています。バイオフィルムの中の細菌には薬が届きにくく、飲み薬だけで取り除くことはできません。
そのため、まず歯科医院で歯石や汚れを機械的に取り除き(歯周基本治療)、必要に応じて歯周外科治療を行うことが治療の中心になります。抗菌薬は、これらの治療の効果を補う「補助」という位置づけです。
ガイドラインでの位置づけ
ヨーロッパ歯周病連盟(EFP)の歯周病治療ガイドラインでは、歯石除去などの治療に抗菌薬の飲み薬を併用することについて、次のような考え方が示されています。
すべての歯周病の方への使用
すすめない(耐性菌の問題や、体への影響があるため)
一部の患者さんへの使用
若い方で全体的に進行した歯周炎など、特定の患者さんでは検討してよい
使うタイミング
歯石除去などの治療と組み合わせて使う
出典:Sanz M, et al. Treatment of stage I-III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020;47(Suppl 22):4-60.
当院でアジスロマイシンを使うケース
- FMD治療の一環として:お口全体の歯石除去と殺菌を短期間に集中して行うFMD治療で、抗菌薬を併用しています。詳しくは「重度歯周病にはFMD治療がおすすめ」をご覧ください
- 侵襲性歯周炎の治療:若い方に急速に進むタイプの歯周病では、歯石除去などの治療とあわせて使用することがあります(侵襲性歯周炎とは?)
どちらの場合も、薬だけで治療するのではなく、歯石や汚れを取り除く治療とセットで行います。
服用するときの注意点
- 下痢、腹痛、吐き気などの副作用が出ることがあります
- ほかに飲んでいる薬がある場合は、飲み合わせを確認するため必ずお伝えください
- 家族に処方された薬を飲む、個人輸入した薬を使うなど、自己判断での服用は避けてください
- 不必要な使用をくり返すと、薬が効きにくい細菌(耐性菌)が増えるおそれがあります
動画でも解説しています
関連ページ:歯周病の治療の流れ/縁下歯石とは?/歯周病専門医による治療
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