ペリソルブ療法

通院回数をまとめて、深い歯周ポケットの清掃を助けるペリソルブ療法

ペリソルブ療法は、次亜塩素酸ナトリウムとアミノ酸を主成分とする薬剤を歯周ポケットに入れて、歯石や細菌の膜(バイオフィルム)をやわらかくしてから、器具でていねいに取り除く歯周病の治療法です。予防歯科の先進国スウェーデンで開発され、欧州などで使われている方法です。日本ではまだ承認を受けていない薬剤を用いるため、自費診療となります。当院ではこの方法に基づく薬剤「ペリオプロ」(日本スウェーデン歯科学会より購入)を使用しています。

当院では、ペリソルブ療法を用いたFMD(フルマウス・ディスインフェクション:お口全体の歯石除去を短期間に集中して行う方法)として行っています。保険診療ではお口を6つのブロックに分けて何度も通院していただく歯石除去を、自費診療としてまとめて行えるのが大きな特徴です。多摩市永山の「福嶋歯科医院」では、日本歯周病学会の歯周病専門医が、研究データを正直にお伝えしたうえでご提案しています。

深い歯周ポケットはなぜ難しいのか

歯周ポケットの深さと歯石の取り残しの割合

歯周病の治療では、歯ぐきの中の歯石を取り除くことが基本です。ところが、歯周ポケットが深くなるほど、器具だけでは歯石を取りきることが難しくなります。抜歯した歯を調べた研究では、ポケットが5mmを超えると、歯石を取りきれた歯はわずか1割ほどでした。6mm以上の深いポケットでは、歯ぐきを開く手術をしても、半分ほどの根の表面にしか歯石を取りきれていませんでした。

そのため、深いポケットでは「いかに取り残しを減らすか」が治療の鍵になります。ペリソルブ療法は、薬剤で歯石や細菌の膜をやわらかくすることで、器具による清掃を助ける方法です。

ペリソルブ療法のしくみ

ペリソルブ療法のしくみ(薬剤を入れる→約30秒待つ→器具で取り除く)

歯周病の治療で最も大切なのは、歯ぐきの中の歯石や細菌の膜を取り除くことです。ポケットが深い部分や根の形が複雑な部分は、器具だけでは取り残しが出やすくなります。ペリソルブ療法では、薬剤で汚れをやわらかくすることで、器具による清掃を助けます。

薬剤はあくまで器具による清掃を助けるもので、薬剤だけで歯周病が治るわけではありません。

通院回数をまとめられる

保険診療とペリソルブ療法の通院回数の比較

保険診療では、ルール上お口をいくつかのブロックに分けて歯石除去を行うため、検査も含めると10回近くの通院が必要になることがあります。ペリソルブ療法を用いたFMDは自費診療のため、お口全体のクリーニングを短期間にまとめて(片顎または両顎を1回、約1〜2時間)行うことができます。お仕事などで通院回数を減らしたい方や、治療が途中で中断しがちな方に向いています。

研究でわかっていること

ペリソルブを併用した研究の結果(6か月後)

ペリソルブ(次亜塩素酸ナトリウムとアミノ酸のゲル)を器具による清掃に併用した研究は、海外で複数行われています。結果は研究によって異なります。

研究 対象・期間 歯周ポケットの改善
(併用 vs 清掃のみ)
結果
Iorio-Siciliano 2021 未治療の重度歯周炎 40人・6か月 2.49mm vs 1.98mm 併用で有意に改善
Radulescu 2022 メンテナンス中 62人・12か月 偽薬より改善 小さいが有意な差
Megally 2020 メンテナンス中 32人・12か月 0.97mm vs 0.85mm 有意な差なし
Wallin-Bengtsson 2024 38人・12か月 ― 有意な差なし
Dolińska 2025 40人・6か月 1.8mm vs 1.57mm 有意な差なし

出典:Iorio-Siciliano V, et al. Clin Oral Investig. 2021;25:5331-40/Radulescu V, et al. Clin Oral Investig. 2022;26:6639-52/Megally A, et al. Clin Oral Investig. 2020;24:201-9/Wallin-Bengtsson V, et al. Acta Odontol Scand. 2024;83/Dolińska E, et al. J Funct Biomater. 2025;16:470

まとめると、未治療の重度歯周炎の方を対象とした研究では、清掃のみより歯周ポケットが浅くなり、出血のある深いポケットが少なくなったという結果が出ています。一方で、すでにメンテナンス中の方を対象とした研究などでは、はっきりした差が出なかったものもあります。また、これらは海外製品(ペリソルブ)を用いた研究で、当院で使用するペリオプロは同じ成分系の薬剤です。

当院では、「薬剤を使えば必ず良くなる」ではなく、「通院回数をまとめながら、深いポケットの清掃を助ける方法の一つ」としてご案内しています。

FMD(お口全体を短期間で治療する方法)とは

ブロックごとの治療とFMDの違いを示す模式図

FMD(フルマウス・ディスインフェクション)は、1995年にベルギーのQuirynenらが提案した治療の進め方です。歯周病菌は歯周ポケットの中だけでなく、舌・のど・唾液にも存在します。数週間かけてブロックごとに治療すると、その間に未治療の部位から、きれいにした部位へ菌が戻ってくるかもしれない、という考えから、お口全体を短期間(1〜2日程度)でまとめて治療します。

FMDについては多くの研究があり、主なものは次のとおりです。

研究 内容 結果
De Soete 2001(ベルギー) 重度歯周炎など31人。FMDとブロックごとの治療で細菌の変化を8か月比較 どちらも歯周病菌が大きく減少。FMDでは、とくに重度の方でさらに減る傾向
Knöfler 2007(ドイツ) 慢性歯周炎37人。FMDとブロックごとの治療を12か月比較 どちらも改善し、両者に差はなし
Yashima 2009(日本・鶴見大学) 慢性歯周炎30人。抗菌薬(アジスロマイシン)を飲んだうえで1日で全体を治療、または1週間以内に3回で治療、抗菌薬なしで6回に分けて治療の3群を12か月比較 抗菌薬を併用した2群は、抗菌薬なしの群より改善が大きく、2群の間に差はなし。抗菌薬なしの群では3か月以降に菌が増える傾向
Fonseca 2015(ブラジル) 慢性歯周炎85人。FMDとブロックごとの治療に、抗菌薬または洗口剤を組み合わせた6群を6か月比較 すべての群で改善。抗菌薬の追加効果ははっきりせず、洗口剤を併用したFMDが最も良好
Pockpa 2018(総説) FMDに関する20年間の研究21件のまとめ 多くの研究で、FMDとその変法の効果は従来のブロックごとの治療と同程度。選択は患者さんと歯科医師の希望による

つまり、FMDだからといって、従来の方法より必ず良い結果になるわけではありません。ヨーロッパ歯周病学会の診療ガイドライン(2020年)でも、FMDとブロックごとの治療はどちらも選択できる方法とされています。FMDの大きな利点は、少ない通院回数・短い期間でお口全体の治療を終えられることです。当院では、このFMDに、深いポケットの清掃を助けるペリソルブ療法を組み合わせています。

抗菌薬(アジスロマイシン)の併用について

歯周病の進み具合や菌の状態によっては、FMDにあわせて抗菌薬(アジスロマイシン)を服用していただくことがあります。アジスロマイシンは歯ぐきの組織に長くとどまる性質がある飲み薬です。ただし、上の表のとおり併用の効果は研究によって結果が分かれており、抗菌薬には副作用や耐性菌(薬が効きにくい菌)の問題もあります。そのため全員に使うのではなく、検査結果をもとに院長が必要性を判断します。

ペリソルブ療法を用いたFMDの特長

特長1:深い歯周ポケットが、歯石除去だけの場合よりも約0.5mm多く改善
歯石除去のみ
1.98mm
ポケットの改善量(6か月後)
ペリソルブ併用
2.49mm
ポケットの改善量(6か月後)

未治療の重度歯周炎の方40人を対象にしたランダム化比較試験(Iorio-Siciliano 2021)では、6か月後の歯周ポケットの改善量が、歯石除去だけのグループより、ペリソルブを併用したグループで約0.5mm大きく、統計的にも意味のある差でした。歯周ポケットは数mmの単位で治療の方針が変わるため、この差は小さくありません。

※研究によっては、はっきりした差が出なかったものもあります(上の「研究でわかっていること」をご覧ください)。効果には個人差があります。

特長2:抗菌薬の効果を活かしやすい
抗菌薬(アジスロマイシン)を併用する場合、薬が歯ぐきにとどまっている短い期間のうちに歯石除去を終えることが大切です。ヨーロッパ歯周病学会の診療ガイドライン(2020年)でも、抗菌薬は短期間で歯石除去を終えるタイミングに合わせることが勧められています。短期間で全体を治療するFMDは、この考え方に合った方法です。

特長3:治療全体が早く進む
お口全体の基本治療が短期間で終わるため、すべての部位を同じ時期に再評価でき、その後の歯周外科治療・再生療法・インプラント治療などへ早く進むことができます。

こんな方におすすめです

  • 中等度以上の歯周病(歯周病の分類でステージⅡ・グレードB以上)と診断された方
  • 仕事や家庭の事情で、何度も通院するのが難しい方
  • 歯周病と診断されたが、治療が途中で中断してしまったことがある方
  • 歯周ポケットが深く、できれば外科手術が必要な部位を減らしたい方
  • 短期間でお口全体の歯周病治療を進めたい方

治療の流れ

ステップ 内容
1. 検査・診断 歯周ポケット検査、レントゲンに加えて、初診時に歯周病菌(P.g菌など)の細菌検査を行い、歯周病の状態を確認します。そのうえで、ペリソルブ療法を用いたFMDが適しているか、抗菌薬の併用が必要かを判断します。
2. ペリソルブ療法を用いたFMD 麻酔をしたうえで、拡大鏡で確認しながら薬剤を歯周ポケットに入れ、やわらかくなった歯石や細菌の膜を器具で取り除きます(片顎または両顎を短期間で)。舌の清掃など、お口全体の菌を減らす処置も行います。必要な方には抗菌薬の服用や、医院で処方する洗口剤(ベンゼトニウム塩化物)でのうがいをお願いします。
3. 再評価 歯ぐきが治るのを待ち、数か月後に再び検査をして改善の程度を確認します。
4. 追加治療・メンテナンス 深いポケットが残った部位は、歯周外科治療や再生療法を検討します。改善した部位は定期的なメンテナンスで維持します。

歯周病治療全体の流れは歯周病治療の流れをご覧ください。

料金

メニュー 費用(税込)
ペリソルブ療法を用いたFMD(片顎) 110,000円
ペリソルブ療法を用いたFMD(両顎) 198,000円

※検査・麻酔・FMD治療の費用、および必要な方への抗菌薬・洗口剤の費用を含みます。自由診療(保険適用外)です。歯周外科治療や再生療法が必要になった場合は別途費用がかかります。料金は料金表もご覧ください。

リスク・副作用

  • 治療中に塩素のようなにおいや味を感じることがあります
  • 治療後に歯がしみる、歯ぐきが下がって歯が長く見える、歯と歯の間にすき間ができることがあります(歯ぐきの腫れが引くことによる変化です)
  • 効果には個人差があり、深いポケットが残った場合は外科治療が必要になることがあります
  • 抗菌薬を併用する場合、下痢・腹痛・発疹などの副作用や、まれにアレルギー反応が起こることがあります。服用中のお薬やアレルギーは事前にお知らせください
  • お口全体を短期間で治療すると、治療後1〜2日ほど、一時的に全身の炎症反応が高まったり、微熱が出たりすることが報告されています(Tonetti 2007 など。通常は1週間ほどで落ち着き、6か月後にはむしろ改善していたと報告されています)。当院では治療後の痛み・腫れ・発熱に備えて消炎鎮痛薬をお渡しします。心臓や血管の病気、糖尿病などで通院中の方は、事前にお知らせください。必要に応じて主治医の先生と相談します
  • 研究では重い副作用は報告されていませんが、長期的な安全性のデータは限られています

使用する薬剤について

  • 未承認医薬品等であること:当院で使用する「ペリオプロ」(ペリソルブ療法の薬剤)は、日本の医薬品医療機器等法上の承認を受けていない国内未承認の薬剤です。そのため保険診療では使用できず、自費診療となります。
  • 入手経路:日本スウェーデン歯科学会を通じて購入しています。
  • 国内の承認医薬品等の有無:同じ成分・性能をもつ国内承認品は、現時点で確認できていません。
  • 諸外国における安全性等:ペリソルブ療法は予防歯科の先進国であるスウェーデンで開発され、販売元によると同国の医療製品庁の承認を受けており、欧州などで使用されています。前述の臨床研究では重い副作用は報告されていませんが、長期的なデータは限られており、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。

なお、未承認の薬剤を使用した治療で健康被害が生じた場合、医薬品副作用被害救済制度の対象外となることがあります。

歯周病専門医からのメッセージ

歯周病の治療の主役は、あくまで歯石や細菌の膜を取り除く「清掃」と、毎日のセルフケアです。ペリソルブ療法は、その清掃を短期間でまとめて行い、深い部分の清掃を助けるための選択肢です。保険診療での治療ももちろん可能ですので、検査の結果をもとに、それぞれの方法の利点と欠点を比べてお選びください。

よくあるご質問

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